陳泮嶺の創始伝承した99式太極拳は、世界各地で行われています。むろん台湾にも継承され、発展してきています。原型である99式太極拳は、まさしく古伝の楊式太極拳がベースとなっていることが、よく分かります。実は太極拳というものは、本来楊派のものなのです。その上に様々な形が積み上げられていっている訳です。だから99式太極拳が、楊派の趣きを持っているのは当然だと言えます。 陳泮嶺先生は、とても姿勢が良いことで知られていますが、楊少候より楊家太極拳を学ばれ(最後の関門弟子)、その奥義を伝授されています。楊少候の父親は楊健候で、健候の子の楊橙甫の伝えた太極拳が、私たち全日本太極拳連盟NSCの受け継ぐ楊派太極拳です。楊少候は、おじさんであった楊班候からも教授を受けたと言われています。楊班候は楊露禅の子供の中で、もっとも武闘派であったと言われ、技のレベルが最も高かったことが知られています。陳泮嶺先生は、その楊班候・楊健候伝の楊派太極拳の技術をベースとして、呉派と陳派の動作を取り込み、李存義の形意拳と程海亭の八卦掌の技術を抽出して99式太極拳を完成させたのです。したがって楊派の特徴が極めて色濃くうかがえます。 この陳泮嶺直伝の九九式太極拳を、伝承されている陳泮嶺先生の実のお孫さんに当たる陳暁怡先生と、この福岡の地で交流することが出来ました。お目にかかった際、何か見えざる力に引き寄せられるような感覚がしたのをよく覚えています。どういう訳か、陳泮嶺先生と王樹金先生とは近しい関係であるにも関わらず、今までその継承者間での交流が、積極的になされることがあまりなかったのです。このご縁を大切にして、互いが技量を高め合うような交流関係が今後も末永く築けたならば、あの世の両先生も喜ばれると思っております。 今回、暁怡先生の許可を頂き、九九式太極拳の動画を挙げさせていただくことになりました。 一方、私たちが継承する王樹金先生の太極拳(王式太極拳)は、張占魁伝の形意拳と八卦掌の影響が、強くうかがえます。王樹金先生は、形意拳と八卦掌は、天津時代に張占魁先生より習得されました。王樹金先生が、王式太極拳を改編できたのは、基となる99式太極拳が、形意拳と八卦掌の要素をしっかりと含んでいたからです。八卦掌の張占魁と程廷華は、極めて近しい間柄であり、形意拳の張占魁と李存義もまた、とても親しい間柄でした。そのような関係性から、陳泮嶺先生と王樹金先生とは、とても信頼し合える同門同然の親しい仲であったのです。歳がいくら離れていようとも。 当会で学ぶことが出来る太極拳には2種類があります。一つは虚実が明確であり、大きな平円を描くのを特徴としている楊澄甫直伝の楊式太極拳で、もう一つは99式太極拳に、八卦掌の螺旋の動きを組み込んだ王式太極拳です。前者の楊式太極拳はの形で象徴されます。対して後者はの形で象徴されます。 尚、当会の鈴木会長は、目下第3の太極拳とも言うべき、武派太極拳を探究されていますので、将来の公開が期待されます。